森下 靖×森下幸次

経営者と船頭
兄弟本音対談

漁師も店舗運営も経営センスが必要

幸次:

俺が明神丸を「高知 ひろめ市場」に出店し、鰹の藁焼きパフォーマンスをやり始めたときもいろいろ議論を交わしたよな。あのときは俺が店長になったばかりで結構しんどくて、うまくいかないことを人のせいにすることもあった。でも、俺がやるしかないと腹をくくったことで道が拓けて今があるし、経営者としての考え方もそこから学んだと思う。

靖:

実は俺も何度か漁師を辞めようと思ったことがある。船頭にも一生ならないと思っていた時期もある。でも腹をくくって、今日釣らないと終わると思ってひたすら仕事をしたからな。俺が行くところに魚がいると信じて。

幸次:

靖は釣ってやるというコミットとセンスがあるよな。あとは運。数字にも強いから船の上の経営者的のような感覚が備わっている。

靖:

たまたま釣れる人もいるけど、俺は一週間先の水温などいろいろな数字を計算して戦略を立てるし、そこまでしないで寝ろと仲間に言われてもとことん考えていた時期もあった。10年以上この仕事をやっていると経験やセンスである程度乗り越えられるし、ありのままを大切にするようにはなってきたけど、最初はたくさん勉強したな。

幸次:

1週間先まで考えて漁をする人は少ないし、燃料代なども考えて利益を出す漁ができる人も少ない。

靖:

漁獲高がどんなに良くても利益がなければ船員に報酬を還元できないし、頭で考えて漁をした方がいいよね。

幸次:

どこのエリアで漁をするかも、漁に出ないで休む決断をするのも、100%船頭が責任を持って決めること。そういう意味では、船頭は船の上の社長だよな。

漁と店舗運営は似ている!?

靖:

船頭が船の上の社長であれば、たしかに、どこに鰹がいて、どんなタイミングで漁を開始し、どこで漁を見切るかなどを判断していく視点は必要だよな。あと、それは飲食の店舗運営にも似ていると思っている。俺は繁盛している店の特徴を掴むアンテナはかなり高いと思うよ。

幸次:

店の立地によってお客様の層は違うし、それによってメニューや内装の雰囲気も違ったりするからね。

靖:

そうそう。俺ならあの店舗にはもっと個室の数を増やした方がお客様から予約が入るとか、喜んでもらえるとか、そういう視点で飲食店を見ていたりするからね。

例えば、以前は鰹のたたきに付いていたツマの大根を残している人も多かったけど、タレを近くに置いたら食べる人が増えたよね。実際に鰹を藁で焼いているところを見せたりする演出もそうだけど、料理に興味がある人が手がけている店だということが伝わってくる。

幸次:

店舗も増えてきたし、常に緊張感を持っていろいろなところに目を配って経営しているからね。

平成最後の日本一。次に目指すものは

幸次:

2018年の日本一は、つまり平成最後の日本一でもあるな。

靖:

2018年12月31日まではチャンピオンでいられるけど、次はまた一からスタート。

幸次:

そして、2019年は新しい船も手に入る。

靖:

漁の解禁時に新しい船は間に合わず、最初は漁に出られないかもしれないからハンデはある。でも乗り越えられない壁は来ないと思ってるから、志を変えず、これからも選んだ道で結果を残していくよ。

TOP